Interview
先端技術と多様性のなかで
自分がやりたいことにチャレンジできる環境
Serigne Mbacke Ndiaye
株式会社モンスターラボ
テックリード
“良いとこ取り”でチームの能力を最大化
ーまずはセリンさんの担当業務について教えてください。
モンスターラボは、クライアントのDX推進をビジネス/デザイン/テクノロジーの3領域から一気通貫でサポートしています。私はテクノロジーグループに属しており、プロジェクトの開発フェーズにおいてバックエンド/インフラのテックリードを務めています。
業務としては、開発・実装はもちろんのこと、クライアントへのソリューションの提案、チームメンバーのサポート、成果物のコードレビューなどを行っています。
また、クライアントと開発チームをつなぐ窓口として技術面の問い合わせにも対応しています。ちょうど昨日もクライアントから「この機能をこういうふうに修正できないか」と相談がありました。
ーQCDSの観点からすべての要望に応えるのは難しいと思いますが、
クライアントとはどのようにコミュニケーションをとりながら進めていますか。
お客様のなかにはテクノロジーにあまり詳しくない方もいらっしゃいますが、例えば今は修正すべきではないタイミングの場合、影響範囲などの要点をまとめて説明すればちゃんと理解してくださいます。
そういった意味では、テックリードとして一番重要なのはコミュニケーション能力だと思っています。経験上、お客様と私たちの間に壁があるとプロジェクトがスムーズに進まないので。困ったことがあったらすぐに相談し、早く解決する。そのために、クライアントの社内規定上問題のない場合はSlackを使っていただくことも。デジタルツールの導入も全面的にサポートしています。
プロジェクトを成功させるために、社内外問わずメンバーを”ワンチーム”と捉え、適宜コミュニケーションをとりながら開発フェーズをリードできるようにしていますね。
ーこれまでどのようなプロジェクトに携わってきましたか。
比較的大きな案件としては、世界的な輸送機器メーカーのIoTシステム開発に参加しました。機械のIoTデータを蓄積・分析するためのプラットフォームを構築し、メンテナンスなどに活用することで、ユーザーの利便性・経営効率性を高めるためのシステムです。
私はバックエンド・インフラのテックリードとして、IoTデバイスで取得したデータをプラットフォームに送る部分のアーキテクチャを担当しました。
まずはクライアントと打ち合わせをして、実施したいことなどの要望をヒアリングし、アーキテクチャに反映しました。開発プロセスのなかでも特に重要なところなので、日本のプロジェクトマネージャー(PM)、日本とベトナムのテックリード、ベトナムのコミュニケーターで、合計10時間近く打ち合わせをしながら設計していきました。
ー長丁場ですね。
正直大変でした(笑)。でも、私はそういうプロセスが結構好きなんですよ。
同じモンスターラボの社員とはいえ、担当してきた案件、経験してきた技術、国によって文化や働き方も異なります。それぞれの経験を共有し、ある意味”良いとこ取り”をしながらチームの能力を最大化していく。これはモンスターラボの強みですし、個人的におもしろいと思うポイントでもありますね。
ー新たな気付きや刺激がありそうですね。
ベトナム拠点のメンバーから「その場合はこういうふうに設計したことがあるよ」と教えてもらったものが、普段の私たちのやり方と少し異なるものだったんです。でも、よくよく考えてみると「確かに今回はそのほうがいいかも!」と。新たな発見がたくさんあります。
みんなで協議しながら進めていくのは時間も労力もかかりますが、そうやってベストな設計を導き出すのは本当におもしろいです。ベトナム拠点のメンバーとはまた一緒に案件をやりたいと思っています。
ー多様性のある環境だからこその困難もあると思いますが、何か工夫していることはありますか。
例えば言葉だけでなく設計図でも伝えるなど、理解してもらいやすい方法をつねに探しています。クライアントだけでなく、チームメンバーに対するコミュニケーションも非常に重要ですから。伝えるべきことは伝えて、お互いの意見を理解して、同じゴールに向かって進むことが大事だと思います。
決め手は「先端技術と多様性」
モンスターラボに入社する前のことを教えてください。
学生時代は、故郷であるセネガル共和国のガストン・ベルジェ大学(Universite Gaston Berger)で数理物理学とコンピュータサイエンスを専攻し、大学院では電子通信(Electronics and Telecommunications)を学びました。その間、プログラミング言語としてはJava、Pascal、C、PHP、Assembly languageなどを習得しました。
卒業後はセネガルのテレコミュニケーション企業に入社し、1年ほどIT事業部に所属。学生時代の学びを活かし、さまざまなアプリケーションの実装に携わりました。それが人生で初めてのIT経験です。
そこから徐々にITシステムに興味がわき、筑波大学に外国人研究生として入学することにしました。
ー日本への留学を決めた理由は?
中学生のとき、歴史の授業で日本について学んだのですが、戦後の経済成長の凄まじさが印象に残っていました。日本車に代表されるような技術力にも興味があり、普段から日本についてよく調べていたので、機会があればぜひ行きたいと思っていたんです。
当初、研究生として2年間在籍する予定だったのですが、2年目の2014年に筑波大学大学院に進学。システム情報工学研究科でコンピュータサイエンスを専攻し、電気自動車のスマートグリッド(※)を研究しました。
※スマートグリッド:効率の良い電力供給を実現するため、電力の流れを供給側・需要側の両方から制御し、最適化する送電網のこと
大学院卒業後は、コンピュータサイエンスの知見を活用でき、先端技術に積極的で、インターナショナルな社風をもつ企業に入りたいと考えました。条件に合う企業が2〜3社あったので、まずはインターンをすることに。
1社目はロボット関連の企業。2ヵ月ほど働きましたが、学べる技術がロボット領域に限定されることと、あまり多様性のない社風が気にかかりました。
その次のインターン先がモンスターラボ。2015年12月から3ヵ月ほど働きました。
ー印象はどうでしたか。
当時から中国やバングラデシュなどさまざまな国籍の社員がいて、日本語だけでなく英語でもコミュニケーションがとれるなど、インターナショナルな雰囲気に惹かれましたね。技術面でも、案件ごとに必要なソリューションが異なるからこそ、新しい技術にチャレンジできる機会が多いのではないかと感じました。
ークライアントワークならではですよね。ちなみに最近ではどのような技術を使っていますか?
バックエンドチームとしては前述のIoTツールのほか、マイクロサービスアーキテクチャやサーバーレスアーキテクチャ、プログラミング言語ではNodeJS、Go、Kotlinなどがあります。私たちのエンジニアブログでも紹介しているので、ご覧いただけると嬉しいです。
(Link)Monstarlab’s Engineering Blog https://engineering.monstar-lab.com/jp/
「なりたいものになれる」場所で
ーインターン後に正社員として入社されていますが、入社後の働き方はどのような感じでしたか?
私はすでにプログラミングの経験があったので、入社後2週間ほどでプロジェクトにアサインされました。トライグループ様の映像授業サービス『Try IT』の開発だったのですが、そこで初めてRuby on Rails(※)を経験をしました。
※Ruby on Rails:島根県松江市在住のまつもとゆきひろ氏が開発したオブジェクト指向スクリプト言語「Ruby」を用いたWebアプリケーション開発用フレームワーク
ーRubyは独学で学んでいたんですか?
Rubyを使うこと自体初めてでした。ただ、Java、Cを使った開発経験があったので、平田(大祐/株式会社モンスターラボ CTO)さんから「やってみないか」と声をかけてもらったんです。
プロジェクトは半年ほど、島根開発拠点のメンバーと一緒に開発を進めました。
2016年に島根開発拠点を訪問。左)日本三大そばのひとつ「出雲そば」を体験。右)拠点長の山口友洋さんと。島根の名所「地の御前・沖の御前」を望む鳥居の前で記念撮影
島根開発拠点は、モンスターラボのRuby on Railsの案件をリードしているだけあって、Rubyの経験値が高いメンバーがそろっています。その知見からRubyKaigi、RubyWorld Conference、RubyConfにも登壇しているほど。そのような方たちと一緒に働いたことで、早いスピードでRubyを学ぶことができました。
「しまもん-モンスターラボ島根開発拠点のブログ」より。島根開発拠点のメンバー・羽角均さんがRubyWorld Conference 2022に登壇した様子
その後はJavaの案件に1年ほど携わりましたが、そこでもElasticsearch(※)などさまざまな技術を経験しました。
※Elasticsearch:オープンソースの分散型全文検索・分析エンジン。オランダ・アムステルダム発のテック企業「Elastic」が提供しており、顧客は全世界で15,000社超。FacebookやUber、国内ではソフトバンクなどの大企業と取引があるといわれる
ーバックエンドエンジニアからテックリードになったのはいつごろですか?
2018年ごろですね。そのころには技術選定、アーキテクチャの設計なども担うようになり、開発プロセスも最初から最後まで一通りリードできるようになっていました。
基本的にはJavaの案件に携わることが多かったのですが、だんだんと別の技術にチャレンジしてみたいと思うように。当時はGo言語(※)のプロジェクトが複数あるタイミングだったので、2019年の終わりごろからGo言語の勉強を始めました。
※Go言語:マルチコアプロセッサ向けに最適化され、マルチスレッド処理を利用できるプログラミング言語。Googleが2009年11月に公開。Googleは、Salesforce、IBM、Netflix、Twitter、Uberを含む多くの企業がGo言語を広範に使用していると公表している
モンスターラボにはメンター制度があり、テクノロジーの知識・経験が豊富な先輩社員とともにキャリアや業務上の目標を立て、1on1ミーティングで随時相談することができます。そこで「今Go言語の勉強をしているので、ぜひプロジェクトに参加してみたい」と伝えたんです。
メンターもエンジニア出身なので、新しい技術にチャレンジすることがモチベーションに繋がると理解してくれました。同時に、プロジェクトに参加するためにはあとどれくらいの勉強量が必要か、具体的なアドバイスをもらうこともできました。
その結果、数週間後にはGo言語を使ったIoT案件にアサインしてもらうことができました。
ー案件のタイミングもありつつ、自分がやりたいことにチャレンジできる環境ですね。
そうですね。私がモンスターラボを気に入っているポイントでもあります。
メンター制度もそうですが、そもそも優秀な人がたくさんいる。JavaやRuby、そのほかの技術についても経験値が高い人が多く、一緒に働くことで早くスキルアップできます。本を読んで勉強するだけではわからないこと——例えばコードをプレビューしてもらい、フィードバックをもらうのは独学では難しいですよね。実際の業務を通じてアドバイスをもらい、知識・技術を習得できる環境はとても魅力的だと思います。
私もそのような環境づくりに寄与したいと思い、半年ほど前にエンジニアリングマネージャーになりました。
ーエンジニアやテックリードとして経験してきたことが活かせそうですね。
過去に自分が苦労したところ、必要なサポートなどもわかりますから。そのような経験を活かし、まずはマネジメント業務にチャレンジしたいと思いました。
ー中長期的なキャリアプランはどうですか。
評価制度の目標設定では3年後、5年後のキャリアプランまで上司と相談できるのですが、次のステップとしてはPMを目指しています。
テックリードとしてクライアントのビジネスを理解しながらソリューションを提案していますが、もっとビジネスの知識を深めていきたいですね。技術的にもまだ学ばないといけないことが残っています。テックリード、エンジニアリングマネージャーを務めながらしっかりと学んでいきたいです。
目指すポジションまでは数年かかると思いますが、モンスターラボは語弊を恐れずに言うと「やりたいことをやれる」「なりたいものになれる」、そんな環境だと思います。その環境を活かして、より上のポジションを目指して成長していきたいです。